top of page

NO.224 「シン・申ジエのいる幸せ」

10月6日
読了時間: 10分

更新日:5 日前

「女子プロゴルフとは、竹刀を振るうゲームなのか?はたまた真剣を振るい、負ければ命を落とす御前試合なのか?」 〜「日本女子オープン2026」観戦記

 

2026/10/6 23:48 wrote



 凡戦に終わった昨年の同大会とは大違い、今大会は壮絶なデッドヒートとなって本年度ベストワントーナメントとなりました。

 

 死闘を演じたのは、ともに全英女子オープン覇者の「申ジエ」選手と「桑木志帆選手」の二人。

 

 勝敗をわけたのは「気持ち」!

 

 試合後に、「桑木」選手は「(自分の力を)80%くらいは出せたと思う。あとは気持ちが足りなかった」と肩を落としましたが、決して「自分のポテンシャルの80%しか出せなかった」と言っているわけではありません。

 

 「自分の持てる力は100%出し切った」が、相手である「申」選手のそれ(気迫)に比べれば、結果的に「自分のそれ(気迫)は、20%ちかくも足りなかった」と語っているのです。

 

 現在、JLPGAでは無双状態にある「桑木」選手をして、そこまで思わせるほどに「申」選手の気迫は凄まじいものがありました。

 

 その気迫の違いを経験の差と言ってしまえばそれまでですが、現在23歳の「桑木」選手に代表される「若手」と、38歳「申」選手のようなベテランとは、そもそもゴルフに対する姿勢が違うような気がします。

 

 最近の若手女子ゴルファーは、ジュニアの頃から最新機材を駆使し、日々更新される最新理論を学び、近代的トレーニングを取り入れ、はてはメンタルコーチまでつけて、同世代の選手と切磋琢磨しあっています。

 

 しかし、彼女らはあくまで、ゴルフをゲームとして捉え、どうするとそのゲームに勝利するかを競っているように思います。

 

 それに引き換え、「申」選手に代表されるベテラン選手は、「ゲーム」というより「試合」イコール「勝負」と捉えているように感じます。

 

 「はぁ〜?ゲームと試合だの勝負?同じじゃネ?」と思われるでしょうね。

 

 たしかに試合を英語に訳せば「ゲーム」(Game)になりますが、もう一つの訳語に「マッチ」(Match)があります。

 

 「ゲーム」は、「競技」全般を示す幅広い言葉ですが、どこか「遊び」のニュアンスも含まれます。しかし「マッチ」になると、がぜん「対戦」「対決」「勝負」と言った要素を帯びてきます。(あくまでも酔狂亭の私観です)

 

 現代のプロゴルフは「ストローク戦」が中心ですから、「“ゴルフ”とは、最終的に他の選手よりどうすれば一打少なく上がれるか、を競うゲーム」ということになり、そこでは、それほど気迫や気持ちが必要とはされません。

 

 いや、むしろそれらは邪魔であり、いまはやりのメンタルトレーニングとは、畢竟そこからいかにして精神的に離れられるかの習得術です。

 

 しかし、「申」選手は違います。三日目が終了したあと、「明日の最終日に「桑木」さんと回れるように、今日は、ものすごく頑張りました」と語っていました。

 

 ご存知の通り「日本女子オープン」の決勝ラウンドは「ツーサム」です。

 

 最終日、最終組で回る、ということは、最強者二名による「マッチプレー」を戦うということになり、もはやストローク戦ではありません。

 

 昨年の「サロンパスカップ」で29勝目を挙げたあと、あと一勝が遠かった「申」選手は、ずいぶん前から、この「ツーサム」でまわる唯一の競技「日本女子オープン」に照準し、ここで最終日・最終組に入れれば「絶対勝てる」、「いや、ここしか私が勝てるチャンスはない!」そこまで考えていたと思います。

 

 そして「申」選手の思惑通りになりました。

 

 しかも、天までもが味方しました。三日目まで穏やかだった天候が、最終日は急に強い雨模様となったのです。

 

 「申」選手は「難コースにおいて、ハードなセッティングになればなるほど、私にチャンスがめぐってくるはず」「なぜなら、私はタフな経験をもっとも多く積んでいる選手だから」という自負がありました。

 

 思えば、いまの若手は、一度も真剣を手にすることなく、道場で竹刀や木刀で剣術の腕を磨いているのに対し、ベテランは、うっかり扱えば指を切り落とし、罷り間違えば人を殺傷する真剣をも振るって稽古を積んでいる、そんな違いを感じます。

 

 かたや「ゲーム」としてのゴルフ、こなた“真剣”「勝負」としてのゴルフの違いが、今回の二人の「気持ち」の違いを生んだ、そう思えた大会でした。

 

 実はもう一人、ゴルフ競技を「ゲーム」としてではなく、つねに「真剣勝負」と考えている選手がいました。

 

 それは「上田桃子」選手・・しかし、彼女は、ついに「これ以上、真剣は振れない」と判断し、一昨年“真剣”を置きました。

 

 しかし、ここにまだ一人、まるで古武士のようにゴルフに向き合い、真剣勝負に挑み続ける選手がいたのです。

 

 そんな選手が存在していることはもはや奇跡に近く、つくづくJLPGAに「申ジエ」選手がいることの幸せを感じます。

 

 しかし、なぜ「申ジエ」選手は、そんなにまでして、命懸けでゴルフをするのでしょう?

 

 実は、当ブログが始まってすぐの頃(約三年前)、まさに「“申ジエ”選手のいる幸せ」というタイトルで、その秘密に迫ったブログをアップしていたので、今回の快挙(通算30勝で永久シード獲得、JLPGAメジャー競技グランドスラム達成)を言祝ぎ、早速再録しましょう! 

 

「申ジエ選手のいる幸せ」(NO.3)

 

2023/8/15 15:03 wrote

 

「やはり今回も申ジエについてはヒトコトも無し。日本ツアーのメンバーなのだから世界に向けてアピールすれば良いのに勿体無い… 」

 

 これは、昨日のTwitter上における「石井忍」ティーチングプロのつぶやき。

 

 何のことかと言えば、先週の全英女子オープンにおいて「申ジエ」選手が三位という好成績を収めたのに、JLPGAはなんのコメントも出していないこと・・もっと言えば七月上旬に行われた全米女子オープンで申ジエ選手が二位タイのときもコメントを出さなかったことを言っています。

 

 たしかに全英女子オープンのとき、ネット上では「日本からは過去最多の16名の選手が参加」という記事が多く見受けられましたが、この16名の中に「申ジエ」選手はカウントされていないのです。

 

 「全英女子オープンに参加する日本人選手は16名」というのならわかります。しかし「日本から参加する選手」には当然「JLPGA」のメンバーが含まれるはずでしょ?それなのに、実は全米女子オープンのときも、今回同様に「申」選手は「日本から参加する選手」にはカウントされていませんでした。


 また、全米、全英で好成績を収めた「申」選手が今回非常に高いポイントを獲得することにより、現在メルセデスランキング一位の「山下」選手を抜いてMRトップになるというビッグニュースも、未だにJLPGAのニュースには掲載されていません。

 

 まるで「申」選手はJLPGAのメンバーではないかのような扱いです。

 

 しかしながら「申ジエ」選手は、今年九人選ばれている2023年度の「JLPGA BRIGHTENER」の一人なんです。

 

 つまり「JLPGA」の「顔」なんですよ!それなのにこの扱い!



 JLPGAのポンコツぶりもここに極まれりです。

 

 なんて義憤にかられてコーフンしていたところ、そういえば以前「申ジエのいる幸せ」というタイトルの文章を書いたことがあることを思い出しました。

 

 結局途中まで書いてそのままになったのでアップしませんでしたが、探してみたら見つかったので、以下にアップします。

 

 

「申ジエ」がいる「幸せ」

 

 ・・・とは言うものの、申ジエ選手の大ファンというわけではありません。しかし、この手強い外国人選手がいることで、どれほど日本女子ゴルフ界が救われているのか、というお話です。

 

 なので正確には、「JLPGAが、申ジエから受け取る大きな受益」というべきかもしれません。

 

 今シーズン(まだ11戦終わっただけですが)に限っても、「勝」、「西村」の人気恐竜二頭が海を渡ったにもかかわらず、ドキドキしながらJLPGAツアーを見ていられる理由の一つに「申ジエ」選手他の外国人選手の久しぶりの活躍があります。

 

 実はここ数年はコロナの影響で韓国人選手はじめ外国人選手の活躍は影を潜めていました。

 

 もちろん、“そのほうが韓国人が優勝しないから気分がいい”という人もこの国には少なからず存在します。

 

 しかし、憎らしいほど強い外国人選手を、日本人選手が負かすから面白いのです。

 

 また、多彩な技、国際的な経験という点において、彼女にまさる現役選手は他にいません。しかも彼女は、若い選手から教えを乞われれば、惜しげもなくその技、経験、心の持ち方を伝授します。

 

 現に「金澤志奈」選手は毎シーズン、オフになれば「申」選手と合宿してその技術を学んでいます。しかしコロナで「申」選手が来日できなかった2021〜2022年シーズンは不調でしたが、このオフ久しぶりに「申」選手と過ごした結果、今シーズンは好調を維持し、上位入賞を果たしています。



 上記文章中に「11戦終わっただけ」とありますから、どうやら2023年5月12日から行われた第11戦「RKB×松島レディス」直後に書いたようですが、なぜ途中で書くのを止めたかは覚えていません。

 

 おそらく昨年両肘と手首の手術を行い、ゴルフ選手としてとてもシビアな身体状況にありながら、日本における年間女王(アメリカと韓国の賞金女王は獲得済み)と永久シードを獲得するために頑張る「申」選手へエールを送ろうと、何かを伝えたかったんだろうと思いますが、思い出せません。

 

 その「申」選手は今シーズン、ケガのケアもあるので試合は休み休みの出場ですが既に二勝・・・しかも予選通過した八試合はすべてベストテン内という素晴らしい成績です。そこへきて、最も過酷で最も名誉あるメジャー「全米・全英オープン」共にトップスリー内ですから、現時点におけるJLPGA最強選手であることは間違いありません。

 

 かつての世界ランキング一位でもあり、メジャーも二勝(全英女子オープン)上げている世界的大選手が、35歳になっても自らの目標に向い、両肘にメスを入れることも厭わず必死に戦う姿を間近で見られる幸せを、一緒に回れるすべてのJLPGAの選手たちは強く肌身に感じているはずです。

 

 しかし2019年から制度変更して外国人選手排除に向かっているJLPGAのポンコツ理事どもはまるで感じていません。

 

 「いやいや十分感じています」というのなら、今回の「申」選手の全英・全米における大活躍をなぜ報じないのか、その理由を示す必要があります。

 

 JLPGA が発表している全英関係のニュースは「畑岡選手が九位タイと勝選手が14位」というタイトルの三日目の記事が最後です。そのニュースの成績表には二人より上位に「申ジエ」選手が載っているのに!!

 

 「申」選手は中学三年生のとき、母親にゴルフ練習場まで送ってもらった帰り、その足で叔母の誕生日を祝いに向かった母親を交通事故で亡くしています。

 

 しかもその車に同乗していた弟と妹も重傷を負い、その看病のために一年間病院に寝泊まりする経験をしています。

 

 家が貧しかった「申」選手は、そこでゴルフを諦めようとするのですが、母親の死の数ヶ月後、それまでどうしても勝つことができなかった試合に初めて勝利し、「一家を支えるために母親が後押ししてくれる」と思い、選手生活を続行、それがその後の世界的大活躍へと繋がるのです。

 

 そんな「申」選手のモットーは「ゴルフを楽しむ」です。最近では多くの若い選手もこの言葉を口にしますが、中学三年生で母親を失い、突然一家の大黒柱になってしまった「申」選手にとって、ゴルフはとても「楽しむ」どころではなかったはずです。

 

 しかしそれから20年にわたって世界の頂点を極め続ける大選手だからこそ、この言葉「ゴルフを楽しむ」が重みを持ちます。

 

 そういえば、「申」選手の今期二勝目の「アースモンダミンカップ」は「岩井明愛」選手とのプレーオフでしたが、優勝を決めた瞬間、涙を流していました。

 

 世界中でトータル60回以上優勝している「申」選手が泣くなんて珍しいなぁ、と思いましたが、聞けば試合直前に最愛の祖母(おそらくは母親代わりだったのでしょう)がなくなり、一旦は葬儀のために帰国しようとしたそうですが、「ゴルフをしているジエが大好き」という祖母の言葉を胸に日本にとどまり頑張ることにしたのだとか・・祖国、祖先、家族を大事にする韓国人としては珍しい行動をとった分、絶対に負けられないと覚悟を決めていたはずですが、その覚悟通り、見事にプレーオフで強敵「岩井姉」を退けたから涙を流したんですね!



 さて、過酷な外国での戦いを終えて、あの強い「申」選手がようやく日本に帰ってきます。

 

 今週の「CAT LADIES」はお休みですが、来週の「ニトリレディス」には参戦です。永久シードまであと二勝!

 

 今シーズン最大の見どころは、「山下」選手の年間女王二連覇と二年連続の平均ストローク「69」台と思っていましたが、ここにきて「申ジエ」選手の日本における初の年間女王奪取と永久シード獲得なるか、この二つに思えてきました。


 
 
bottom of page